野口雨情と石坂まさを 男と女
宝山寺と音楽

ここで宝山寺とかかわり在る「音楽」について書きます。
昔から「ご当地ソング」というのが数多くありますが「宝山寺」も観光地の一つとして多くの唄の題材になっています。

■民謡「生駒新地流し」

宝山寺の関しての唄は、大正の終わりから昭和の初めにかけては小唄、民謡が多くつくられてます。その中に野口雨情の作品「生駒新地流し」があります。(下参照)
野口雨情は童謡作家として有名ですが、北原白秋とともに大正9年(1920)から昭和10年(1935)にかけ「新民謡運動」を起こします。雨情は日本各地を旅行し地元の民謡の作品、百数作品を残し、その中にこの「生駒新地流し」があります。当時は各市町村や温泉組合等から、「観光宣伝用」として依頼されることも多かったそうです。この「生駒新地流し」は依頼され作ったか、自発的に作ったかは不明ですが、雨情もこの宝山寺を訪れ、この詩を作ったのは間違いないでしょう。戦前の宝山寺が華やかだった頃の雰囲気がよく解る作品です。

生駒新地流し
歌謡曲「女町エレジー」

一方、昭和歌謡にも宝山寺を題材にした「女町エレジー」という作品があります。ここのHPのタイトルのヒントにもなりました曲なんですが、
多くの歌手が歌っています。
本家本元は奈良県出身の吉野さくら。1973年にシングル曲が発売されています。
(下にYOU TUBEBの曲あり)
また、1973年に藤圭子のLPの中の1曲におさめられています。(「演歌全集 憂愁・恋心」他に77年「霧の摩周湖」74年「GOLD30」)

私は当時この曲は知りませんでしたが、曲としはヒットしたそうです。
作詞・作曲は石坂まさを。石坂まさをは藤圭子(宇多田ヒカルの母)の曲「圭子の夢は夜ひらく」等多くの彼女の作品を手がけています。
いわゆる不倫物(?)の昭和歌謡のひとつで名曲だと思います。
今も歌い継がれている作品で三笠優子「花街の母」のB面曲として発売されたり森若里子、憂歌団(タイトルは『イコマ』
)等が唄っています。又、年配の方の中には今でもカラオケで歌われる方もおられます。



この2つの曲を比べてみると、宝山寺の昔と今の風情がよく出ています。「生駒新地流し」は情緒があり華やか。一方「女町エレジー」は裏の人生を引きずってちょっと暗め。まぁこの辺は「闇の商売の街」と言う宿命があるので仕方がありませんが。年配の方なら、当時流行ったご当地ソングとして「ここの場所を歌ったのか」とうなずける人も多いのではないでしょうか。

(敬称略)


女町エレジー
女町エレジーの収録されたLPレコード、シングルレコード、CD
「女町エレジー」のCD、レコードを収集しました。
藤圭子(「藤圭子ゴールド30」 LPレコード)
1975年 RCAレコード 定価4000円

大阪日本橋の中古レコード屋さん等を探したりしましたが中々見つからず、Yahooのオークションで落札購入(3000円)しました。
このLPの「女町エレジー」は一番最初に発表されたオリジナルです。シングルカットやCD化はされず数種類の藤圭子のLPだけにしか収録されていません。
久々にアナログレコードを聴くんですが、レコードプレイヤーは所有していたものの、今持っているCD/MDコンポでは聞けないので、「Phonoイコライザー」(増幅器)まで購入しました。レコードに針を落とす動作や少しノイズが入った音も懐かしかったです。
この「藤圭子ゴールド30」にはヒット曲の「新宿の女」「圭子の夢は夜ひらく」「女のブルース」と入おりコチラの方も楽しめました。

藤圭子は「圭子の夜ひらく」で暗いイメージが連想されますが、「女町エレジー」もド演歌で非常に暗い(笑)作品です。一つ知りたいのは、藤圭子は、宝山寺に訪れたかどうかが気になります。


ジャケットの中と曲目

◆収録曲
【A面】
1.新宿の女
2.女のブルース
3.圭子の夢は夜ひらく
4.命預けます
5.女は恋に生きてゆく
6.さいはての女
7.恋仁義

【B面】
1.愛の巡礼
2.知らない町で
3.京都から博多まで
4.別れの旅
5.みちのく小唄
6.花は流れて
7.悲しみの町
8.明日から私は

【C面】
1.遍歴
2.恋の雪割草
3.京都ブルース
4.私は京都へ帰ります
5.あなたの噂
6.昭和仁義
7.サントロペに死す

【D面】
1.女の流れ唄
2.涙ブルース
3.おんな道
4.圭子の網走番外地
5.
愛と罰
6.雪のブルース

7.
女町エレジー

8.うしろ姿


三笠優子(「花街の母」A面、「女町エレジー」B面 シングルレコード)
1975年 RCAレコード 定価600円

ジャケットのイラストが「女町エレジー」にも合いそうな絵です。カラオケで「女町エレジー」の歌手名が「三笠優子」の明記されているのは、A面の「花街の母」がヒットがあったからと推測されます。「花街の母」も芸者の世界を唄った作品なので、宝山寺を共通点があります。2曲続けて聴くと、「昭和」のレトロ感が一杯感じます。ちなみに、Yahooオークションを利用して、400円で購入しました。
◆収録曲
A面 花街の母 B面 女町エレジー



森若里子(「演歌特撰ベスト16」 CD)
1998年7月28日徳間ジャパン 3000円

中古レコード屋で購入したCDです。このHPを開設時に購入しました。森若里子という名前は知りませんでした。なんか旅館の女将さんみたいな写真ですねぇ(笑)。他の収録曲もまったく知らない曲でした。
◆収録曲
1.浮き舟の宿 2.潮来船 3.浮草情話 4.人生三・三夢拍子 5.恋情話 6.悲しき子守唄 7.女町エレジー 8.おしろい船 9.浮雲 10.船頭小唄 11.雪の華 12.リンゴ花咲く故郷へ 13.女の通りゃんせ 14.いろは仁義 15.むすめ巡礼 16.女の酒


吉野さくら(「石坂まさを作詞作曲25周年記念 心歌さがし求めて」CD
1994年12月15日BMGビクター 3000円
石坂まさを作詞作曲25周年の記念CDアルバムです。「女町エレジー」は吉野さくらが唄っています。他に藤圭子、角川博、弦哲也の唄が入ってます。
◆収録曲
1.新宿の女 2.女のブルース 3.圭子の夢は夜ひらく 4.命預けます 5.女町エレジー 6.雨のしのび逢い 7.涙ぐらし 8.許してください 9.北へ 10.浪速の夢 11.おしどり 12.べにばな 13.夢おんな恋おんな 14.男意地 15.心友 16.心歌

カラオケ(三笠優子 本人出演)
熱演の三笠優子
旅館内での撮影。旅館名は判らない・・・
20年位前の映像??
携帯カメラの為、不鮮明ですが
画面では旅館名も確認できます
生駒は悲しいおんなまち〜
カラオケ代
長い間、カラオケは気になっていたんですが、唄うと周りが非常に気になるので歌ったことがなかったんですが、(2008年2月)遅まきながら唄いました。

唄ってビックリ。三笠優子本人が出演し、その上 ロケ地は「宝山寺」(!)撮影時期は少しふるいですが、間奏で登場する、風景カットは旅館の参道。目が点になりました。
皆さんも「確認」の為、唄いましょう♪
野口雨情
のぐち・うじょう
(1882-1945)


詩人。茨城県多賀郡磯原村(現北茨城市)生まれ。北原白秋、西條八十と並ぶ「童謡三大作詞者」の一人。童謡の代表作は『十五夜お月』『七つの子』『赤い靴』『青い目の人形』『雨降りお月』『兎のダンス』『しゃぼん玉』『証城寺の狸囃子』などがある。民謡には『波浮の港』『須坂小唄』など。
 

野口雨情記念館
石坂まさを
いしざか・まさを
(1941〜)


作詞・作曲家。東京都生まれ。
藤圭子(宇多田ヒカルの母)とコンビで多くのミリオンセラー作品を残す。代表作に『新宿の女』『圭子の夢は夜ひらく』『命預けます』等。他の歌手の作品は『北へ』(小林旭)『おしどり』(五木ひろし)等などがある。
最近は失明の危機の中、『心歌』シリーズに意欲を燃やしている。
【補足事項】

■「生駒新地流し」
完全版(右歌詞)

上の縦書きの「生駒新地流し」の詩は「生駒市史」の中に掲載されたのを引用しましたが、「定本 野口雨情 第五巻」を調べると歌詞の数や並びが違っていました。
上の詩は「歌いやすさ」を念頭において「編集」されたかもしれません。
右の「完全版」は生駒全体を歌い「観光色」が強い印象になります。


■「女町エレジー」元歌は藤圭子 本家本元は吉野さくら

このページを作る時点で「女町エレジー」を一番最初に歌った人が実は不明でした。
最初この曲は藤圭子のアルバムに入っているをウェブで見つけたんですが、どうもシングル曲としては未発売。あっちこっち検索しても。中々解らない・・・
三笠優子のEP盤は「花街の母/女町エレジー」
でB面曲なので、なんか違うみたいだし、不明のままUPしました。

後日購入した「カラオケステーション」(タカラのテレビに繋げてカラオケが楽しめるマイク型のカラオケ機。曲の増加はPCでダウンロードでき中々の逸品)に丁度「女町エレジー」の曲があり早速購入しました!
タイトルの歌手の紹介の部分が「三笠優子 1973年」と明記され、これで三笠優子が元歌としてUPしてました。(2003・4)

ところが、暫くして掲示板で「元歌は藤圭子。三笠の方が発売が後」と言う指摘を受けました。
「花街の母/女町エレジー」は78年(S53年)発売。
基本的な間違いをしてました。(-_-;)
やはり、最初の藤圭子が元歌みたいでした。(2003/9)



と書きましたがYOU TUBEで「女町エレジー」を検索していると
曲がアップされておりました。

歌手 
吉野さくら
作詞 石坂まさを
作曲 池多孝春
1973年 RCA JRT−1323 500円


シングル曲で1973年に吉野さくらが出されたのが
「本家本元」と判明しました。
(2010/10)






ジャケットには宝山寺の階段の参道が。
RCAは藤圭子も出していたレコード会社です



「生駒新地流し」完全版
生駒ながめて星かと聞けば
何んの星かよ灯の明り

旅の春風大和路めぐり
けふは生駒に明日は奈良

名残をしさに生駒の山で
啼くは夜あけの時鳥

明日は別れか生駒の山の
雲のゆき来も気にかかる

むかし思へばくらやみ峠
いく度涙で越したやら

春の生駒は桜の名所
明けりや一夜で花となる

西に大阪東に吉野
ここは大和の生駒山

生駒新地は気楽なところ
三味や太鼓で日を暮らす

忘れなさるな生駒の山を
わたしや新地で待つほどに

逢ひはせぬかよケーブルカーで
粋な姿のあの人に

音頭とるやらまんかの淵は
どんとどとと水が鳴る

ついてゆきたい岩船さまの
岩屋くぐりも二人づれ


聖天さまへりん気をなさる
生駒女護の島帰しやせぬ

男ひでりの生駒の新地
通りや娘も出て招く

生駒名所清水滝に
秋は紅葉も散りかかる

生駒新地に灯のつく頃は
お山おろしが身にしみる


参考文献
「定本 野口雨情」第五巻(発行:未来社1986年7月25日)
「生駒市誌 資料編U」(発行:生駒市役所 昭和49年5月1日)

TOPへ

イコマエレジーロゴ